【陽菜side】



何かした訳じゃないのに。


いつからだっけ?




HR前の廊下で、ふとそんな考えが頭をよぎって足を止めた。


それから雑念を振り切るように頭を左右に振って再び歩を進めていく。




「………はあ」



あたし、高原 陽菜(たかはら ひな)。
高校二年生のいちおうまだ17歳。


特にこれと言った秀でたもながあるわけでも、特別かわいいって訳でもない普通の女子高生。


強いて言うなら……身長が低いってことぐらいで……って、これはコンプレックスなんだけど。



そんな私にも付き合ってもうすぐ二年目になる彼氏がいる。



彼の名前は 山寺 飛鳥(やまでら あすか)



あたしと同じ高校二年生で、背が高く、運動もできて、さらには勉強も出来ちゃうという完璧男子。



さらには顔立ちまで整ってて。



あたしには、もったいないくらいのイケメン彼氏様なんです。





まあただ、


ある問題を除いては、なんだけど………。




「ねえ、ねえ、飛鳥くーん。 今日のお昼一緒に食べよ~」



「昼? ああ、そうだな。 考えとくよ」



「きゃっ!ほんと??やったぁ、楽しみにしとくねぇ~」



あたしの横をイチャイチャと通りすぎる男女。



そうそう。あたしだって、こんな風にイチャイチャ………じゃなくて。



声を聞くだけでも楽しそうな会話。


つい目をそちらに向ければ、歩きにくいくらいにくっついて歩くカップルがこちらへと向かってるのが見えた。




あー、いいですねー……羨まし……って。





……ちょっと待って。



ピタリと足を止める。
ついでに思考も止まりそうになった。



そしてあたしは目を見開く。



…………通りがかっただけでも、香水の臭いがプンプンしてきたパンダメイクの女の子の名前は知らんけど、


その子が腕を絡めてる相手なら知ってるぞ!!?