「あ~か~の~」

「ひ、ひゃい。…カチョー、すみまっせ~ん。つまづいちゃって…」

 入社以来、温いお茶を頭から被ったのは、初めてである。

 赤野は、小さく舌を見せ、テヘッと笑う。

「…ちょっと、来なさい」

「ひいぃぃっ。や、優しくしてくださいぃ」

「やかましいわっ!誤解を与えるような言い回しは止めろ!…さっさと来い!」

「大神課長、赤野さんに厳しいよな~」

「な~」

 部下逹のヒソヒソ話を尻目に、いつもの如く、赤野燈子を503会議室、別名『説教部屋』へ引っ張ってゆく。