俺、大神秋人は、我が社の創業以来初、若冠29歳で業務課長に抜擢されたという、出世街道まっしぐらのエリート・サラリーマンである。

 これも、昨年の新規大口受注の取り付けと、普段のたゆみない社長への滅私奉公の結果なのである。

 その俺が…。

 今年の『当社若手OLが選ぶ、抱かれたい男ランキング』には間違いなくトップ5には入ろうという、この俺様がだ。

 あろうことか、我が業務課きっての役立たず、新人2年目のお惚けOL、赤野燈子に…。

 “恋”をしてしまった。



 事の発端は、昨年度。

 まだ係長だった俺と彼女が、一緒に一泊二日の出張に出た時の事だ。

 気の進まない任務を終え、腐っていた俺は、気晴らしに赤野を飲みに誘った。

 それが意外にもすっかり意気投合し、いざ“お持ち帰り”寸前かというところで。

 今、俺の家のコタツにのさばっている、このガーディアン気取りのストーカーに阻止されてしまったのだ。


「ん、ナンだよ、じろじろ睨んで」

「別に」


 その結果ーー

 社会に入ってこの方誘った女に、しかもキスまでした女に、断られたことは一度もないこの俺がだ。

 あんな、大ボケ小娘に“待った”を喰らわされることになってしまったのだ。