ちっくしょおおおおっ!

 赦せ赤野。

 俺は出世街道を往く男。

 一時の気の迷いで、道を失う訳にはいかない。

 止めどなく溢れる涙もそのままに、俺は、クリスマス・ソングの流れる賑やかな街道をひた走る。

 これでも高校時代は野球部だった。

 …補欠だったけど。



ーー10分後。

 息を切らしてホテルのエントランスに到着。

 2分で乱れた服装とヘアを整え、汗を拭き、エレベーターで最上階へと向かう。

 待ち合いから、手招きをしている社長にたどり着くまでに呼吸を整え、まるで何事もなかったように対峙する。

「やあ、すまないね。呼び出してしまって。きっとお楽しみのところだったろう」
 
 50も半ばとは思えないほど精力的に、この御方は白い歯を輝かせて笑う。