さわさわ…と、葉っぱが擦れる音が響くように聞こえる美術室。




あたしの前には1枚の大きな桜の絵。







あたしの、恋の始まりの絵。








「っあー……」
「ねぇねぇ、ザッキーたちが食堂行こっ て言ってたんだけど、優里も行く?」
「んーあー…あたし、美術室に忘れ物しちゃってさぁ・・・だから、先行っててもらってもいいかな?」
「わかったー。んじゃ、待ってんね」
「うん」



あたしは1人、あやと別れて校舎の奥にある美術室に向かう。

さっきの美術室の授業で、筆箱をそのまま置いてきてしまったから。




鍵が開いてるか心配だったけど、確か今日は美術部がある日だった気がするから、職員室には寄らずに向かった。





「失礼しまぁーす…」




しーん、としている美術室。

誰もいないのかぁ。と思い、中に足を進めたら、奥の1番後ろの席で大きいキャンパスに絵を描いてる男の子を見つけた。



「ひっ…………すみ、ませ、」
「・・・」


彼はゆっくりキャンパスから顔を離し、あたしの顔を見た。




「あの、」
「…………ん、これ、」
「あっ!それ、あたしの筆箱・・・」
「こん中、入ってたから」
「ありがとう、ございます」



ん、っていって投げ出されたあたしの筆箱、

よりも、彼に目がいってしまった。