何度も繰り返し、小説の同じフレーズを指先と視線でなぞる。

それでも、集中していないせいで、その意味が頭に入ってこない。



ざわめく教室にいながらも誰とも関わっていないのに、ひとりで勝手にどきどきして。

喉はからから、連日の緊張疲れでそろそろ体調を崩してもおかしくない。



高校1年生、春。

友だちづくりに失敗したわたしはひとり、教室の片隅で小さくなっていた。



「うう……」



小さく目立たないようにうめく。



中学の頃なら、わたしにだって仲のいい友だちがいたんだよ。

レース編みの髪留めをいつもつけていて、花柄ワンピの似合うハルカちゃん。

わたしたちはいつも一緒に行動していた。



学校は別になってもわたしたちの関係は大丈夫だと信じていたし、今でもそう思ってる。

でも、新しい友だちがひとりもできないという事態にわたしはもういっぱいいっぱいなんだ。



ハルカちゃんに会いたい……と思わず泣きそうになっていると、



「はるー!」



誰かが彼女のニックネームを呼ぶ。