ケータイ小説 野いちご

暇つぶしに恋はいかが!?

ちょっと臆病になっているんだと思う

「付き合ってる? あの噂の鬼チーフと!?」

「しー、声が大きい!!」

 そう言った私の声も十分に大きかったのだけれど。彼が仕事だから買い物に行こう、と小谷に誘われて、久々にやってきたお馴染みのカフェで「どう? いい人見つかった? 誰か紹介しようか?」なんて言われたものだから、実は……と切り出してみたらこの反応である。

 周りを見渡してみたが、さほど私たちを気にしている人はいない。休日の少しお洒落なカフェはカップルや友達同士で訪れている人が多くほぼ満席に近かったが、みんなそれぞれの会話に夢中だ。それでも会社の人に聞かれたら、と思うと気が気ではない。

「ちょっと待って。だって前にここで会ったときに彼と別れたことを聞いてさ。で、そのときほとんど会話したことないって言っていた鬼チーフと今は付き合っているってどういう展開なわけ?」

 さすがに先程よりは声を潜め、それでも理解に苦しむ、という態でこめかみを押さえながら小谷は説明を求めてきた。私自身も改めて「付き合っている人がいる」と言うとなんだかしっくりこないのはどうしたものか。

「えーっと、どこから説明すればいいのか」

「最初からよ、最初から! それにしても、また好みがガラリと変わったわね。やっぱり顔?」

「はぁ?」

「だってそうでしょ? 宮城の今までの彼からすると、どちらかと言えば同年代で明るくて一緒にいて楽しくなるような人が好みじゃん」

 特に意識したことはなかったけど、今まで付き合ってきた人は小谷の言う通りのタイプだ。そっか、そういうのが私の好みのタイプだったのか。的を射ている小谷の発言に私は純粋に感心する。

「そうだね。言われてみればそうかも」

 この前の食事会でもお約束の恋人がいるのかいないのか、という話題になりもちろん「いない」と即答した私に次に飛んできたのは好みのタイプについてだった。元彼である慎二のことを思い浮かべるのもなんとなく癪で、私は悩みながらも「明るくて優しい人」と無難に答えたのだった。

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