ケータイ小説 野いちご

ひとみ

昼間の彼女



結局ボクは、ひとみさんに言われたまま、朝食の準備をした。
2枚トーストを焼いて、牛乳をたっぷりと入れたふんわりしたスクランブルエッグを作った。
匂いに釣られて彼女はリビングにやってきた。
まるで犬みたいに鼻の利く人だ。

「駿平君、料理上手ねぇ。うん、君ならきっといいお婿さんになれるわよ」

食欲を刺激されたのか、彼女は上機嫌でそんなことを口走った。
たかだか、スクランブルエッグひとつで料理が上手とか言うなって、本来なら『家政婦』として雇われたアンタの仕事だろ、内心毒づいてみたが、当然口には出せる言葉ではない。

ひとみさんは、ボクの正面に座り、自分の前に置かれた朝食をガツガツ食べ始めた。

なんともまぁ………
オッサンみたいな食い方でして………

でも、まぁ、ボクとしても悪い気分はしない。
ボクが作った料理を美味しそうに食べてくれる人の姿が見れるわけだから。
考えてみれば、人と一緒に食事をするのも久しぶりだ。
寮生活の頃は当たり前だったけど、あれは考えてみれば、食事というより餌である。
食べ盛り、育ち盛りの少年にとってまさに食事は餌付けであった。

普段、大学に行ってもさして親しい友人の少ないボクは、ひとりでパンをかじることがほとんどだし…………

そんなことをボンヤリ考えていると、ひとみさんが話し掛けてきた。

「駿平君、君、料理上手だから毎日料理作ってくれない?」


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