───シュッ…… 時刻は夜の10時過ぎ。 車どおりのない静かな住宅街に、微かに風を切る音が聞こえてきた。 今日もまた、はじまった。 部屋のカーテンを開けると見慣れた光景が目に飛び込む。 それは、向かいの家の庭で、投球練習をする隼人の姿。 「がんばるなぁ……」 お風呂から上がったばかりのあたしは、タオルで髪を拭きながらそこに目を落とした。