「きらちゃん?」

神野先輩の顔が近い。

「その呼び方やめてって言ってますよね?」

声がとげとげしいのは、自分でもわかってる。ってか、わざとだ。

「んじゃ綺羅星ちゃん」

「そっちのほうが嫌です」

「ならどう呼べばいい?」

いやいや、わかるでしょ。

「普通に『朝霧』でいいですけど」

そう。わたしの姓名は朝霧綺羅星。綺羅星って名前が私は嫌いだ。『きらら』だなんて、THEキラキラネームじゃない。

「なら、『あーちゃん』ね」

いやいや、「あ」しか同じじゃないですが…

「いやです」

「きらちゃん?」

「…」

「綺羅星ちゃん?」

「…」

「あーちゃん?」

「…っっっ!もう『きらちゃん』でいいで
す!や、よくないけど、まだましです!」

ついに折れてしまった。き…きらちゃんなんて、恥ずかし…

にこりと先輩が笑う。

「じゃあそろそろ勉強しないとね」

貴様のせいで勉強出来てねーんだよ!!

「先輩、それでもカテキョですか、まったく」

「あれ?俺の成績は…」

「学年1位ですよね!知ってますよ!そういうことを言ってるんではなくて、勉強に対する姿勢ですよ、姿勢!」

なぜこんな人が学年1位なのかが解せぬ…

「頭いいのに、なんで勉強に対する姿勢がこんなんなんですか!」

「やろうと思えば真面目モードで教えられるよ」

はあ!?

「ならそうしてください!」

ほんと、このままじゃ余計成績落ちそう。

「じゃあきらちゃん。問題集開いて」

先輩の目つきが変わる。おっ、真面目モード発動!