虎之助たちは座敷に上がり、利巌の部屋に通される。

利巌の前にくると己の刀を横に置き、正座する。

利巌も正座し、胸のまえで腕を組んでいる。

まず、虎之助が利巌に頭を下げる。


「先ほどのご無礼、申し訳ありませぬ」

「よい。それよりも、おぬしらの名は何という」


利巌に訊かれて、皆が順々に答える。


「拙者は、根津虎之助と申します」

「藤吉(とうきち)です」

「喜八郎です」

「伊助です」

「新山(しんざん)です」


そして


「せん、と申します」


最後は女子だ。歳は十六、七か。

皆、若い。三十歳に達しているのは虎之助と藤吉だけで、他の男は二十代だ。


ひととおり、彼らの名前を聞いた利巌が、皆に尋ねる。


「わしに用があって、参ったのであろう。いかなる用向きで…」


そこまで話した利巌は、ふと気づいたように、おせんの懐剣に視線が流れる。