一方、利巌の屋敷では――

藤吉の話とおなじ話を、利巌が虎之助から聞かされていた。

(なるほどな…)

虎之助たちが宗矩と関係があることは、おせんの懐剣に印された二枚笠の家紋から想像がついていた。

利巌ほどの人物であれば、虎之助たちを一目見ただけで、彼らの腕前が、かなりのものであることが判る。

みんなが利巌に向ける目は、数多の殺戮を繰り返してきたことを、如実に物語っている。

そんな彼らだが、数年前からだんだんと仕事が減ってくる。

宗矩に呼ばれることが、なくなってきた。

将軍家や柳生に敵対する相手がいなくなれば、当然そうなる。


しばらく平穏な日々を過ごしていた彼らだが、そんな皆のもとへ、不意に池永が訪れる。


「宗矩様が、お呼びである」


久々の仕事だと思った皆は、気を引き締めるのだった。