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熱をだしたあの日、私は夕方になってようやく保健室で目を覚ました。



まだだるい体を起こすと、ベッドの枕元に位置する小さなテーブルの上に、一枚の書き置きがあるのを見つけた。



《命令、早く風邪治せ。
あと、彼女とかいねーから。》



なぐり書きのような文字で書いてあったのはたったそれだけだったけど、だれからのメッセージかはすぐにわかった。



『蓮……』



この書き置きがあるってことは……蓮、保健室に来たの!?



寝顔見られちゃった?



だとしたら、恥ずかしすぎるよ!



熱のせいか記憶が曖昧で、ずっと寝てたような、でもなにかあったような気もする。


あやふやだぁー……。



でも、

〝彼女はいない〟

そのことが知れて、なんだかホッとしたような気がする。



って、なんでホッとしてるんだろう、私!



でも、ずっと心に掛かっていたモヤモヤが晴れた気がするのは事実で。