サーシャの朝は遅い。
毎日明け方近くまで店を開けているからだ。

丁度昼になるくらいに起きる。
若干酒が残った状態で起きるのはいつもの事。

飲んでいた常連は、次の日の朝も元気に漁へと出掛ける。
サーシャはそんな常連達のタフさには驚くばかりであった。

「んんん~!あーだるい!」

と言いながら、身体を伸ばす。
ベッドから起き上がるとカーテンを開けた。外は今日もいい天気だ。

外の風景を見ながら、サーシャは昨日の事を思い出していた。
昨日のあの騎士は酒を一杯飲み終えると、金をカウンターに置いて静かに去っていった。

あまり会話もせず、何も聞かずに帰っていたどこかの国の騎士。

「名前くらいは聞いとけばよかったか。・・・まあ、どうせもう会う事もないだろうし・・いいか」

結構いい顔してたんだよなあ、と少し残念に思うサーシャだったが、知った所で身分が違う。
どの道これ以上は交わる事がないんだ、とそう考え直してまたいつもの日常に戻った。