教室の中と外では気温差が激しいんだろう、わずかに窓が白く染まっていて景色が見えない。

外はまるで幻のようにぼやけているのに、きっと幻が似合うのはやけにあたたかいこの教室の方。

つかの間のぬくもりはとても儚い。



……そんなふうに思っていたこともあったなと頬杖をついたまま柔らかなため息を落とす。

笑みがほどけるように、そっと消える。



入試の人がいるからぽつぽつと空席が目立つ教室。

だけどいつもと変わらず、わずかにざわつきながらも終礼が終わった。



せわしなく立ち上がり、帰る準備をする。

荷物を持ち、防寒具を身につけた。



その様子を見ていたらしい、西田さんがくすりと笑い声をあげた。



「木原さん、なにかあったの?」

「え?」

「だってなんだか嬉しそう」



その言葉にぱちぱちとまばたきを繰り返す。



「今度お話聞かせてね」



きゅっと手を握り締められて。

じゃあまた明日、と彼女はあたしに背を向けて、はるの元に行った。