それは、何かを印刷した白い紙だった。

「これは、桜井邸の住所と電話番号です」

「よく調べたな。個人情報なのに」

「総務ですから」

 それって、職権乱用じゃ……

「三浦君、どうしますか?」

「行くさ。決まってんだろ」

 俺はそれを手に取り、じっと見た。家から車で1時間ってところだろう。

「手強いぞ?」

「ああ。分かってる」

「頑張ってください。桜井さんのために」

「おお。もう速水を失望させないから」

 俺は体から闘志がふつふつと沸くのを覚え、握りこぶしを作るのだった。

「三浦君、紙!」

「ん? あ、いっけねえ……」

 気づけば、速水がくれた住所の紙を、握りつぶしていた。慌てて元に伸ばしたけれども。