3年付き合っていた同期の彼が2年前に大阪支社に転勤になって私達は遠距離恋愛になっていた。





1ヶ月前……


明日の休みは朝から大阪の稔の所へ行こうと思って駅まで急いでいた。

だが、結局終電には乗り遅れてしまった。

家までは車で1時間以上かかる。いつもなら社に逆戻りするのだが…

この時間だと一時間ほどで着くだろう?明日は休みさすがに今日は家に帰りたい。

仕方なくタクシーで帰ることにした。

タクシーに乗り込むと稔に電話は掛けようと携帯電話を鞄から出す。

液晶画面には去年二人で見に行ったクリスマスのイルミネーションをバックに撮ったツーショットが待受になっている。

稔の番号は勿論アドレスに登録してあるが、稔の喜ぶ顔を想像しながら、番号を1つづつ押す。

この時間ならまだ稔は仕事か自宅に帰っていても起きているだろう?

稔はワンコールで出てくれた。

私の電話を待っていてくれたのかと嬉しくなる。


「もしもし稔?あのね私、美容雑誌の編集長の内示出たのそれでね明日そっちに……」


念願の編集長になったから一緒にお祝いをして貰おうと思っていたのだが…

稔は私の話を遮り…

『美貴野ごめん、俺、結婚する』


「ちょっと!ごめんって何言ってるの?」


『別れてほしい!彼女に子供が出来たんだ…』


稔は、あきらかにいつもの声のトーンと違っていた。

仕事で疲れていようがどんなに遅い時間でもいつも優しく話してくれた。

こんなにも暗い声の稔は初めてだった。

まるで知らない人と話しているようだった。

だから…冗談じゃなく本気だって分かった。


「彼女……」


彼女って私は恋人じゃなかったの?…じゃ私は何だったの?

『』3年したら本社に戻って来れるそしたら結婚しょう』って言ってくれてたじゃない…

あと1年もしたら私達結婚するんじゃなかったの?

先月合った時にも結婚の話したじゃない……


『2ヶ月前から同じ大阪支社の事務の子と付き合ってるんだ……』


稔は淡々と彼女と付き合った経緯を話しだした。

それて……


『ごめん』と電話は切れた……


「…………」


二股かけられてたの?…

5年近く付き合った私が捨てられたの…

稔と結婚すると思っていたのに…

気が付くと涙が流れていた。

タクシーの中だから涙を止めなくてはと思っていたが、止められず口に手を当てて声を押し殺して泣いた。