「…不満ですか」

 目の前に座る大宮さんは、呼びだしたはずの蓬ではなく、俺が来たことにはっきりと落胆の色を見せていた。

 でも、今蓬と会せれば蓬が壊れることは明らかで、みすみす差し出すわけにはいかなかった。

「蓬は」

「家で、弟たちと遊んでいますよ」

 弟という表現にすら表情を険しくさせる。

 やっぱり、か…。

「蓬に、話したそうですね」

「話すことは必要だと弁護士とも話をつけている。私は、あの子の誤解を解くために」

「そうでしょうね。…でも、母親との馴れ初めを聞かせる必要はなかったはずだ。ただ、母親がDVに会って、蓬を守るためにあなたに預けるはずが、手違いが起きたと言えばよかったはず」

 話を遮られたことで不満そうな顔をしたが、その表情を更に険しくさせる。