3月5日という新しいパーツが出てきた時、車内にジジッと微かな音が聞こえてきて、あたしはハッとした。


「今の音、聞こえた?」


「あぁ、聞こえた」


頷く旺太。


他の2人も頷いた。


すると次の瞬間、男の声で車内にアナウンスが流れ始めたのだ。


《残り30。残り30》


それは電車内のアナウンスと同じような声色で響き渡る。


「やっぱり、隣の車両に誰かいるんだ!」


「車掌さんでしょう? アナウンスできる状況にいるってことだよね!?」


あたしたちはほぼ同時に立ち上がり、前の車両との継ぎ目へと急ぐ。


前の車両はまだ暗闇に包まれていて、何も見えない。


だけど、確かにアナウンスは流れたんだ。


旺太と朋樹がドアを叩き「助けてくれ!」と、叫ぶ。


あたしと愛奈もそれに続いて声を上げた。


「お願い、助けて! ここから出して!!」


「そっちの車両に誰かいるんだろう!? 助けを呼んでくれ!!」


「こっちでは死人が出てるんだ! 助けてくれ!」


それぞれが懸命に声を張り上げる。


しかし、暗闇の中に人の気配は見当たらない。