どうすることもできなくてそれぞれが椅子に戻った時、澪がまだ窓を開けっぱなしにしている事に気が付いた。


「澪、窓を閉めて」


あたしは声をかける。


しかし、澪は動かない。


「おい、聞こえてるのか?」


朋樹が澪に近づいた瞬間、澪がこちらへ振り向いた。


その目は見開かれ、涙が頬を伝って落ちている。


一瞬、車内は静まり返った。


「おい、お前なにかしたのかよ!」


すぐに旺太が朋樹の腕を掴む。


でも、朋樹はなにもしていない。


ただ、澪に近づいてだけだった。


「澪、どうした?」


旺太が聞くと、澪は小刻みに震えながら左右に首を振った。


「まさか、暗闇の中に何かがいたとか、言わないでよ?」


愛奈が怯えたようにそう言い、自分の体を抱きしめた。