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「悪い。待たせた」



鳳皇メンバーに帰るよう指示しに行った十夜があたし達の元へと戻ってきた。


鳳皇のメンバー達は「またねー!」と言って手を振りながら先に帰っていく。


それに手を振り返し、あたし達も歩き出した。





「──ちょっと待って」


歩き出した足を止め、目の前にいる中田を見据える。


目が合った中田は“いつも”の中田だった。


とてもじゃないけど、さっきまで絶望の色を纏っていた人物には見えない。



足を止めた事に気付いたのか、中田がゆるりと視線を上げ、あたしを見た。


交わる視線。


互いの間に沈黙が訪れる。




「……もう会う事はないな」


先に口を開いたのは中田だった。


抑揚のない声とは裏腹に、あたしを見つめるその瞳は少しだけ哀しみを帯びている。



「……もう鳳皇に危害を加えたりはしないんでしょ?」


「………」



そう問いかけても中田は何の反応も示さない。


けど、真っ直ぐ見据えるその瞳が肯定を表していた。



「なら、会っても話しぐらいはするよ。鳳皇と獅鷹に害がなければ別にいい。

あたし、そういう事はあんまり根に持たない方なんだよね。終わった事はスパッと忘れるの」



「ブハッ!確かに忘れてそう!!」


「でも食べ物の恨みはいつまで経っても忘れねぇよな!」


「陽!そんなこと暴露しないでいいからっ!!」



吹き出す彼方をジロリと睨みつつ、陽の口を手で塞ぐ。



「んー!!」


苦しさから逃れようとジタバタもがく陽に「お口チャックね!?」と釘刺していると、


「……クッ」


背後から笑い声が聞こえてきた。