俺はずっと手を振り続ける。
あいつの背中が見えなくなるまで、ずっと………。
『良かったんですか?主様』
佐藤の背中が見えなくなって手を降ろした時、元主従の狐、お紀が近づいてきた。
「やめてくれ、主様なんて…。俺はもうお前の主なんかじゃない」
『それでも、わたくしの主様はあなただけですわ』
「ならば、最後の主命令だ」
俺は絶対に首を立てに振らないお紀の為に、最後の命令を与えた。
「俺のことを主様なんかじゃなくて、名前で呼べ」
『たか、ばやし様?』
首をコテリと傾け疑問文で返してきた。
「様付なし」
俺は一言だけなのに、お紀はニッコリと綺麗に笑った。