「またかよ」

学校にある傘立てを
見つめる女の子に話しかけた。


窓ガラスから
絶え間なく降り続く雨が横目に映る。


「うん...」


この子は雨の日、毎回傘を無くす悪い子だ。


「一緒に帰ろう。」
自分の傘を指さして微笑むと、

その子もにこっと笑ってランドセルを揺らした。


「朝は、ちゃんと傘あるんだよ。でも、学校が終わったらなくなっちゃうんだ。
なんでだろうね?」

俯いてその子は呟いた。


そして僕も答えた。
「分からないけど、
その時も僕が君を傘にいれてあげるよ。」
って。


えらいでしょ?


そしたら君はにっこり笑ってこう言うんだ。
「もうなくさないよ」
って。



でもね


それは絶対できないよ_____________































ああ、今日も雨だ。
大きめの傘を持っていかなきゃ。


あ、あの子が前に歩いてる。


話しかけたいけど、だめなんだ。


学校に着くまでは話しかけちゃいけない。
気づかれてもだめだ。


「 ここでは我慢が必要です。」


いつもの赤い傘を持ってあの子は僕の前を歩くんだ。


学校に着いた。


あの子が傘を手放した瞬間に、
僕は動き出すんだ。


自分の傘を置いて、
すぐにあのこの傘を手に取って、
外の焼却炉に隠して、



ほら



もう君の傘はなくなった。


「あれ!? また傘がない...」
放課後、
君が困ってるところに颯爽と僕が現れて、こう言うんだ。


「仕方ないなぁ。
じゃあ、一緒に帰ろう。」


って。