……どうなってるんだ。
変なヤツに誘拐され、変な部屋に入れられてからかなりの時間がたっているが、今だ変化はない。
すると、かなりいいタイミングに、部屋にある唯一の扉が空いた。俺と同じように、手を後ろで縛られ、やってきたのは高身長のスタイルがいい黒髪の男。髪は肩ぐらいまで伸びているが、それはそれで彼に似合っていた。
彼は意味がわからないというように、連れてきた変なヤツに抗議している。
でもそれは俺もやった。最終的にはナイフを突きつけられ、「あまり、うるさいようだと殺すぞ。」と言われたのである。
彼も同じような結果だったのだろう。
恐怖が混じった顔で、俺がいる部屋の中央に向かって歩いて、俺から少し離れた所に腰をかけた。それからしばらく無言が続いた。無言は嫌いなんだ。
仕方なく俺から話しかけることにした。

「……さっきのヤツら、一体何なんだろうな。」
彼は、俺が話しかけると少し驚いて普通に返してくれた。
「わからないよ。君も誘拐されてきたんでしょ?」
「あぁ。塾の帰りに、不意をつかれてな。」
「僕も塾の帰りに。もしかして君も受験生?」
意外な事を聞かれた、と思った。
そういえば名前もまだか。
「俺、リョウ。中3の受験生。お前は?」
「僕はアキ。僕も中3。」
……俺よりも背が高いから、てっきり年上だと思ってたんだが、同い年なのか。話し方が子供っぽい印象を受けた。よく見ると、仕草もなんだか子供っぽい、と思った。