あ、……まただ。



目の前に座る彼の視線を確認し、心の中でカウント数を増やす。

一体今日は、どこまで伸びるんだろう。



「でね?お兄ちゃんったら、その格好のままインターホン出ちゃってー」

「さすがお前の兄ちゃん、って感じだな」

「どういうことよ」

「そのままの意味」



怒る素振りを見せる私に、彼は悪戯っ子のような表情を向ける。

他の女の子には見せない、特別な顔。



「……もう暗くなってきたし、そろそろ帰ろっか」



鞄に手を掛けて言ってみるけど、案の定彼は席を立つのを、少しだけ躊躇った。

そんな彼を見て、私は溜め息を吐きつつ教室の電気を切ってやる。



「ちょ……待てよ、結梨(ユウリ)!」

「3秒以内に支度しないと、ドアも閉めちゃうよー」

「3秒は無理!」