榊原唯斗。ごく普通で何も特徴がなく平凡な暮らしをしている。しかしひとつだけ他の人と違う事がただひとつだけあったのだ。とてつもなく人付き合いが苦手。今あなたは思っただろう。
「どうせただのコミュ症だろう」
と、違うのだ。それ以上なのだ。人に触れることはできず、話すと声が震えてしまう。足が震えて逃げ出すこともできない。なので彼はこの世界に生きて剣というものを一本しか持っていない。その剣は父親から死に間際にもらったもの。名を「黒狐」。黒曜石のように黒く輝き硬い。この剣一本でやっていけるとは思ってないがやるしかない。
「そんな彼だから私は興味があるの!」
彼女は結城凪沙。世間一般でいういいところのお嬢さん。金持ちだ。
「だがなぁ、彼に会ったのは一度きりなのだろう?」
「そうだけど…また会える気がするのお父さん!」
「そんな気がするのなら行くがいい。だが彼に迷惑かけるのならやめなさい」
「かけないって大丈夫!安心して」
凪沙は玄関まで駆け抜けていった。
「行ってきまーす!」
凪沙は街へ走っていった。街を歩いてるとあの剣を見たのだ。彼女は一気に体温が上がり走り出した。
「ん〜ここら辺にいたのになぁ〜」
二、三分歩いていると…
「いたぁ〜」
走って駆け寄ると彼は驚いて尻餅をついてしまった。
「ははっ大丈夫?」
凪沙は手を差し伸べた。
「だ、大丈夫です。す、すみません」
彼は立ち上がると一礼して立ち去った。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!榊原唯斗くんだよね?探してたの」
「ど、どうして俺なんかを…」
戸惑いながら答えると凪沙はにこっと笑い
「ねぇ私を1階層に連れてってくれない?」
「ご、ごめんなさい。俺では力になれない。」
唯斗はうつ向くと凪沙は手を握り走った。
この世界はどこかの気まぐれな神様が作った塔がある。歴史上では人類が生まれる前からあると言われている。人々は神聖なものだとか、神の試練だとか口々に言っている。だか人間の心理的に謎があるなら解明しないと気が済まないようで攻略が始まったのだ。階層ごとにボスと言われる怪物がいる。榊原唯斗はソロで攻略に挑んでいる。かっこつけようとか、目立ちたいとかではなくただ単に一緒に攻略する人がいないのだ。
「さぁ着いた!行こ!」
凪沙は突入するとボスがいる所へ行った。まだ1階は攻略されてなくボスの攻略をしている途中だったのだ。
「俺にできるかなぁ?」
小声で言った。
「できる!私たちも手伝うから!」
凪沙はカバンから手の平サイズの鳥を出すと肩に乗せた。
「行こうか」
唯斗は大きな扉を開けた。
ボスは鬼。金棒を持ち軽く五mを超える身長。
「勝てるのかこんなのに」
凪沙は手を握り
「弱気になっちゃダメ。あなたは私の救世主なのだから」
救世主?俺はそんなものになったつもりはない。だが初めてじゃない気がする。
「いくぞ」
唯斗走り出した。
赤鬼は金棒を振り下ろした。
唯斗はかわすと大きく飛び上がり一発切り込む。
「私もこのままじゃいけない」
凪沙は鳥を手放すと大きく円を描いた鳥は赤鬼に突っ込んだ。その鳥は鷹のように猛々しかった。
「駄目だ!来るな!」
鳥に聞こえるはずもなく鳥は赤鬼の金棒に直撃。粉砕されてしまった。
「ルゥ。」
泣いた。凪沙は泣いた。唯斗は剣を握り締め赤鬼に向かった。
「殺す殺してやる!」
唯斗は思った。なぜ人見知りの俺が女ひとりにこんな本気なんだろうか?知らない。だけど今できることをするのみ。
唯斗は赤鬼を倒した。なぜだろうこんなに清々しく残酷なほど悲しいのは
「ご、こめんなさいルゥ。わ、私が無能なばっかりに」
「君は悪くない。俺が弱くて、そして君の大事なものを傷つけてしまった。君のペットと…そ、その心を」
「なんで泣いてるの?」
「俺は決めたんだ。もう誰も傷つけないって。」
「あなたの過去には触れない。」
泣き止むと立ち上がり
「もう大丈夫!あと図々しいかもしれないけどお願いいい?」
「あぁ」
「私とパーティー組んでくれないかな?」
「ごめん。俺よりいい人はいっぱいいるからさ」
凪沙はしょぼんとした。
「ご、ごめんごめん俺でよければ」
凪沙は満面の笑みで頷いた。