«晴side»


あの後、佐那斗君は帰ってしまった。
なんだか、悪いことしちゃったなぁ。

…だめだめ!
今日の患者さんに集中しないと!

えーっと…

「最初は、近江升也…初めての人だな。
よし、まずは何気ないことから話そう。

それから、タイミングを見計らって少しずつ奥の方に入っていく。

…うん、イメトレ完了。」

コンコンッ

丁度いいところで、ノックが鳴った。

「どうぞ。
こんにちは、今日はいい天気ですね。

初めまして、僕は篠原「初めましてじゃありませんよ。」

「え…?」

目の前の男の人は、帽子とサングラスを外した。

「あ…っ、マヤさん!
変装セットが変わったので全然気がつきませんでした…。」

そうか、近江升也ってマヤさんの本名なんだ。

「来てくれたんですね!
ちゃんと予約を取って。」

「ええ。
晴さんと話したかったので。」