【桜菜side】



「ち、遅刻だー!!」



夏が終わり、少し涼しくなってきた9月中旬。
ワイシャツのボタンをとめながら、急いで階段をおりる。


あと10分で家を出なきゃ間にあわないよ~。



「お母さん、なんで起こしてくれなかったのー!」



「何度も声をかけて体を揺すったけど、あと5分寝させてって言ったのはどこの誰よ?」



リビングにいるお母さんはあわてる私を見て、あきれた表情をする。



「う、ウソだぁ……」



そんなのまったく記憶にないんだけど……。
もうほんと私ってドジだなぁ……。
自分にあきれるよ。



「はい、お弁当」



「ありがとう!」



お母さんからお弁当を受け取り、和室にある仏壇の前に立つ。



「お父さん、いってきます」



ニッコリ優しく笑っているお父さんの写真に向かってそう言った。



私、宮咲桜菜(みやざきさな)はどこにでもいる、ちょっとドジな高校2年生。
お父さんは私が幼い頃に交通事故で他界し、今はお母さんとふたりで暮らしている。