「朝倉くん、明日からの出張の準備は大丈夫かい?」


山本課長が、ちょっと困った顔で可南子を自分のデスクへ呼んだ。


「はい、大丈夫です」


可南子がそう言うと、課長は小さな声で話し始めた。


「実は、今回の福岡の出張なんだけど、部長がね、あんまり乗り気じゃないんだ。
僕と顔を合わせる度に、朝倉さんと二人で行ったらどうですか?って、そればっかり言ってくる」



「そうなんですか・・・」



「今回は、会議の他に福岡の支社に挨拶にも行かなきゃならないし、向こうは部長の接待をするのを楽しみにしてるんだけどね・・・

部長が、行きたくないみたいなことを言い出してるんだ」


山本は、本当に困っていた。
若い上司を持つ気苦労はしょうがないが、最近、山本は想太の中に心の闇を少なからず感じていた。


「部長は、朝倉くんには、何か話しているかなと思って」