今日、可南子は、横浜支社に行く日だった。
三日前から、山本課長にそう言われていた。
理由は、想太について一緒に挨拶回りをすることだった。

横浜支社には、坂上所長という気難しい上司がいる。
どうしても仕事の都合がつかない山本が、教育係として可南子にお願いしてきた。


「朝倉さんは、坂上所長のお気に入りでもあるから、僕が行くよりも部長の役に立つと思うんだ。
忙しいとは思うんだが、引き受けてくれないか?」


可南子は、渋々、引き受けた。

断る理由もなかったから・・・


可南子は部長室に想太を迎えに行くと、同行するのが可南子だと知って想太はとても喜んだ。


「可南子、用事は午前で終わるんだろ?

よし、お昼は中華街で食べよう」


子供のようにはしゃぐ想太を見て、可南子は先が思いやられた。
電車の中で、想太に坂上所長との付き合い方を教え込まなければと真剣に思った。