翌朝、可南子はいつもより早く会社へ向かった。
想太が、可南子の家の近くに住んでいるという事実を知ったからだ。

可南子は、想太とは距離を置きたいと思っていた。
突然の再会から一日経って、少しは冷静になれたとは思う。
でも、今までのすれ違いの日々を簡単に受け入れることはできなかったし、想太が側にいると自分をコントロールすることが難しかった。

オフィスに着くと、若い女子社員の子達が可南子を取り囲んで質問をしてきた。


「昨日、部長が可南子さんの事を必死に捜してたみたいですよ。

部長には会えたんですか?」



「可南子さん、部長と知り合いなんですか?」


若い女の子にしてみれば、想太はすばらしく魅力的なのだろう。
背が高いせいで、スーツがよく似合う。
私の前ではやんちゃだが、会社では落ち着いた大人の男のふりをしている。
そして、何よりも、整った顔にたまに浮かぶくしゃくしゃとなる笑顔のギャップに、皆、心を奪われる。