この街の、どこにこんなに人がいたんだろうかと不思議に思うくらい混雑している道を潜り抜け、ようやく待ち合わせ場所の鳥居の下に到着した。
ぐるりと周囲を見渡すと、予想に反して探していたものは簡単に見つかりほっと息を吐いた。
中学生の男女数名のグループ。
向こうも俺に気がついたようで、俺を誘った張本人の陽太が大きく手を振った。
「昴〜、こっち。 お前で最後だぞ」
「ごめん、遅れて」
別に遅刻はしてないんだけど・・と思いつつも、主に女の子達に向けて謝罪の言葉を口にした。
女の子達はピンクや黄色の鮮やかな色の浴衣姿で、袂や裾が揺れてまるで熱帯魚の群れのようだった。
キレイだな・・・素直にそう思った。
浴衣姿の女の子達から少し離れたところに居心地悪そうに立っている子がいる事に気づく。
白いノースリーブのブラウスにデニムのショートパンツ、淡いピンクの細いストラップがついたサンダル。
瑶だった。
「あいつが来るなんて聞いてないんだけど・・・」
小声で陽太を問い詰めると、あっさり白状した。
「あ〜、久我原さんね。 ほんとは別の子が来るはずだったんだけど、ダメになったらしくてピンチヒッター。
久我原さんが来るって知ったら、昴こないかと思って黙ってた」
「来ないに決まってんじゃん」
「だろ? 黙ってて、正解だった」
陽太は悪びれずに言う。
俺と瑶はもちろん違うクラスだけど、血の繋がらない兄妹だというのは結構有名な話だ。
たまに双子だと勘違いしてる奴がいるけど。
「妹とお祭りなんて嫌だよ」
俺は学校では意識的に瑶を妹と呼ぶ。
そうじゃないと、下衆な勘繰りをして要らないことを言ってくるやつもいるから。
「まぁ、来ちゃったんだから楽しもうぜ。 俺、焼きそば買うから昴はじゃがバタ買ってきてよ」
・・・仕方ないか。
ここで帰るのも、あまりにも子供っぽいよな。
じゃがバタを買う為に行列に並んでいたら、誰かに背中をトントンと叩かれた。
振り返る前に昴と呟く声が聞こえて、俺は後ろの人物が誰かを悟った。
「あのさ、私ははぐれたふりしてこのまま帰るから昴は機嫌なおして楽しんできてよ」
瑶も多分、俺が来ていることは知らなかったんだろう。
「別に、お前に帰れなんて思ってないよ。俺が帰るから瑶は遊んでくれば?」
「それはダメ! 女の子達みんな、昴とお祭り行くの楽しみにしてたんだって。
じゃ、私は行くね」
「えっ、ちょっと待っ・・・」
あっという間に瑶の姿は人混みに紛れて消えてしまった。
俺はせっかく半分より前にきていたじゃがバタの列を諦めて、瑶を追いかけた。
瑶が浴衣じゃないのが幸いした。
浴衣姿の女の子のなかで、洋服の若い女の子は逆に目立つ。
瑶は露店が賑やかに並ぶメインの参道をそれた、出口に向かう通りの大きな松の木の下にしゃがみこんでいた。
「瑶? 何してんの?」
驚いた瑶が勢いよく、顔を上げる。
柔らかいダークブラウンの瞳が俺を見つめる。
「昴っ。 何でこっちにいるの?みんなは?」
俺は瑶の質問を無視して、瑶の前に屈み込む。
「足首、怪我? 転んだの? 意外とどんくさいね」
瑶は足首を押さえていた。
「ち、違うよ。 さっき、思いきり踏まれて捻ったの」
暗くてはっきりとはわからないけど、瑶の足首は赤く腫れているようだった。
「どっちにしろ、どんくさいじゃん。
ちょっと待ってて」
ぐるりと周囲を見渡すと、予想に反して探していたものは簡単に見つかりほっと息を吐いた。
中学生の男女数名のグループ。
向こうも俺に気がついたようで、俺を誘った張本人の陽太が大きく手を振った。
「昴〜、こっち。 お前で最後だぞ」
「ごめん、遅れて」
別に遅刻はしてないんだけど・・と思いつつも、主に女の子達に向けて謝罪の言葉を口にした。
女の子達はピンクや黄色の鮮やかな色の浴衣姿で、袂や裾が揺れてまるで熱帯魚の群れのようだった。
キレイだな・・・素直にそう思った。
浴衣姿の女の子達から少し離れたところに居心地悪そうに立っている子がいる事に気づく。
白いノースリーブのブラウスにデニムのショートパンツ、淡いピンクの細いストラップがついたサンダル。
瑶だった。
「あいつが来るなんて聞いてないんだけど・・・」
小声で陽太を問い詰めると、あっさり白状した。
「あ〜、久我原さんね。 ほんとは別の子が来るはずだったんだけど、ダメになったらしくてピンチヒッター。
久我原さんが来るって知ったら、昴こないかと思って黙ってた」
「来ないに決まってんじゃん」
「だろ? 黙ってて、正解だった」
陽太は悪びれずに言う。
俺と瑶はもちろん違うクラスだけど、血の繋がらない兄妹だというのは結構有名な話だ。
たまに双子だと勘違いしてる奴がいるけど。
「妹とお祭りなんて嫌だよ」
俺は学校では意識的に瑶を妹と呼ぶ。
そうじゃないと、下衆な勘繰りをして要らないことを言ってくるやつもいるから。
「まぁ、来ちゃったんだから楽しもうぜ。 俺、焼きそば買うから昴はじゃがバタ買ってきてよ」
・・・仕方ないか。
ここで帰るのも、あまりにも子供っぽいよな。
じゃがバタを買う為に行列に並んでいたら、誰かに背中をトントンと叩かれた。
振り返る前に昴と呟く声が聞こえて、俺は後ろの人物が誰かを悟った。
「あのさ、私ははぐれたふりしてこのまま帰るから昴は機嫌なおして楽しんできてよ」
瑶も多分、俺が来ていることは知らなかったんだろう。
「別に、お前に帰れなんて思ってないよ。俺が帰るから瑶は遊んでくれば?」
「それはダメ! 女の子達みんな、昴とお祭り行くの楽しみにしてたんだって。
じゃ、私は行くね」
「えっ、ちょっと待っ・・・」
あっという間に瑶の姿は人混みに紛れて消えてしまった。
俺はせっかく半分より前にきていたじゃがバタの列を諦めて、瑶を追いかけた。
瑶が浴衣じゃないのが幸いした。
浴衣姿の女の子のなかで、洋服の若い女の子は逆に目立つ。
瑶は露店が賑やかに並ぶメインの参道をそれた、出口に向かう通りの大きな松の木の下にしゃがみこんでいた。
「瑶? 何してんの?」
驚いた瑶が勢いよく、顔を上げる。
柔らかいダークブラウンの瞳が俺を見つめる。
「昴っ。 何でこっちにいるの?みんなは?」
俺は瑶の質問を無視して、瑶の前に屈み込む。
「足首、怪我? 転んだの? 意外とどんくさいね」
瑶は足首を押さえていた。
「ち、違うよ。 さっき、思いきり踏まれて捻ったの」
暗くてはっきりとはわからないけど、瑶の足首は赤く腫れているようだった。
「どっちにしろ、どんくさいじゃん。
ちょっと待ってて」