潮の匂いがする。





目を瞑ればかすかに感じることができるこの匂い。


それは眠ることを知らない、この煌びやかな街が海に近いから。


私はこの匂いがすごく好き。



「美羽~女子高生はだめだってぇ」



友達の木下陽菜(キノシタハルナ)が手をパタパタさせながら、ため息交じりにそう言った。



「そっかぁー今日は収穫なしだね」


「うん、他んとこいくぅー? C駅付近とか」


「でももう1時だしなぁ」



深夜0時を回っても、この街は眠ろうとしない。


ネオンが煌々と光りを放ち、店の前では団体のお客さんやキャッチをする店員でごった返している。


私、佐久間美羽と友達の陽菜は17才の高校2年生。


こんな時間に、このような場所は似合わないはずの年齢だ。