「はぁ…。」


私は、机の上に肘を立てながら
深くため息をつき、



「…どうかしたの? ティアナちゃん」


彼女は私を心底、心配するように
話しかけてきた。


彼女というのは、勿論、
山吹陽彩のことであり、
私と彼女は今、この〝小さな世界〟の
中で話をしていた。



「大丈夫…。ただ少しね…。」


「…何かあったの?
私で良ければ相談に乗ろうか?」



ー彼女は本当に優しい人だと思う。
私から見ても理想的な女性だ。
しかし、今回の件について彼女に
相談するか否か、私は迷っていた。

相談をしたら、もしかしたら彼女は
私たちの関係に
疑いを持つかもしれない。
当然、私は私のことを隠し通すつもり
だけど、一番怖いのは
全てばれてしまい、彼女の曇りのない
穏やかな眼差しが、疑念と嫌悪に
満ちる、凍てついた眼差しに
変わってしまうことだった。


彼女のそんな姿を見るのは
少しどころか、かなり嫌である。