颯との電話を終えたあたしは、どうやって家まで帰って来たのかよく覚えていなかった。


呆然とした状態で歩いていると、いつの間にか家が目の前にあった。


「なにしてんだ、純白?」


玄関前でそう声をかけられて我に返ると、お兄ちゃんが不思議そうな顔をしてあたしを見ていた。


「あ……おかえり」


お兄ちゃんは伸びてきていた髪を切り、いつもよりも爽やかな印象になっていた。


「家、入らないのか?」


「入るよ……」


あたしはそう返事をして、お兄ちゃんの後に続いて家の中へと入ったのだった。


「今日はどうしたんだよ、ぼーっとしてお前らしくないな」


「別に、なんでもないよ」


本当の事なんて言えるわけもなく、あたしは適当に返事をする。


階段を上がって自分の部屋に入ろうと胃sた時、お兄ちゃんに手首を掴まれた。


立ち止まり、振り返る。


「なに?」