綺麗な花を咲かせていた草花も、美味しい果実を実らせていた木々も枯れ始めていて、随分と寒い日が続いている今日この頃。
 私達の住む《名も無き村》には《オルフォード・アイン大国》の王都《オルフォード》から男性の方が三人訪れていた。その内二人は恐らく護衛役なのだろう。とても重そうな鎧を装備し、腰には両手剣が挿してある。武骨で飾り気は無いものの、キラリと光る刀身はひと目で良い品と解るものだ。最後の一人は、他の二人とは違い軽装でひょろりとしている。彼が護衛二人を雇っている張本人で、商人、それも奴隷商人だと思われる。
 我が国では奴隷制度が認められていて、ある程度の衣食住を与えていれば、自分の所有物として賃金無しに労働力として使う事が出来るのだ。奴隷といっても人間なので、かなりの値段だ。そのため滅多に乱暴に扱われることは無い。
 奴隷商人の方は両親に連れられてやって来た私を品定めする様なーー実際に、しているのだろうーー眼で私を見て来る。

 じっと見られている私は、普段とは少し違う格好をしている。

 洗う事が出来ず薄汚れていた身体が綺麗に洗われ、全体的に白くなり、ボサボサで伸び放題だった髪も櫛でとかされ腰位の長さで整えられているのだ。またそれだけでなく、普段は着ることの出来ない綿で作られた上質なワンピースに腕を通している。
 …… まあ、ほっそりとして頼りない腕や脚は変わってないけれど。