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飯塚先輩がナニカに殺されてから、約2週間が経過した。


7月まっただ中の今日は、晴天で蒸し暑い。

朝からギラギラした日差しが照りつけて、登校してきただけで汗だくになって気持ち悪かった。


ハンドタオルで首筋を伝う汗を拭いながら、私は2ー5の教室に入った。


教室内には既に3分の2ほどのクラスメイト達が揃っていて、絵留と琴美と梨沙の姿もある。


梨沙は自分の席に座り、うつむいていつもの明るさはない。


それは、飯塚先輩の事件でバレー部が無期活動停止処分となっていて、廃部も検討されているからだ。



どんよりと暗い梨沙を励まそうと、絵留と琴美が明るく話しかけていた。


励ますと言っても、なるべく飯塚先輩のことやバレー部についての話題を避けて、『昨日のドラマが』とか、『可愛い雑貨屋さん見つけたんだ』とか、何でもいいからとにかく話しかけている感じ。


でも、何を話しかけても梨沙は笑顔を見せてくれない。


それはしょうがないよね。

絵留と琴美の励まし方は的はずれ。


関係ない話題を振られても、梨沙の心は暗闇から出られないよ。


飯塚先輩が生き返るわけじゃないし、バレー部の危機がなくなるわけじゃないんだから……。