街は早くもクリスマスのイリュミネーションが華やかな12月。俺達は会社からほど近いところにある居酒屋へ向かって歩いている。

 と言っても、俺の横を歩くのは真奈美ではなく佐藤さんで、俺は佐藤さんに腕を取られ、寄り添うようにして歩いている。


「佐藤さん、普通に歩きませんか?」

「なに言ってるの、佐伯ちゃん。これが普通でしょ? 男と女が歩くのに、離れて歩くなんて私に言わせれば不自然だわ」

「それは特別な関係の男女の場合じゃないんですか? 俺と佐藤さんは……」

「小さい事言わないの」


 はあー。こんなところを真奈美に見られたら、ただじゃ済まないだろうなあ。


「チーフ、大丈夫かなあ。ね?」

「はい……」


 真奈美は午後から病院へ行っており、結局は間に合わなくて会場へ直行する事になっている。今夜は忘年会も兼ねた、佐藤さんの内々の送別会だ。

 佐藤さんは、今月いっぱいで退社する事になった。はた目には美樹本さんとの不倫騒動を気にしていないように見えたが、やはり辛いのだろう。と真奈美は言っていた。


 それにしても、真奈美はどうしたんだろうか……


 あの激しく病院を嫌う真奈美が行くという事は、余程の事だと思う。このところは貧血を起こす事もなく、特に具合が悪かったとは思えないのだが……