―秘密のいちごキャンディー―

飛行機雲が青空をふたつに分ける。

夏休み明けのけだるさの残る9月半ばの朝、窓際の一番の特等席から外を眺める。

1限目から嫌いな化学。

席替えのくじ引きでいつも一番人気のこの席は、風通しもよく柱の影に少し隠れるスポットがあるから漫画を読んだり手紙を書いたりしても先生にバレない。

窓際後ろから3番目。
この席になってから、学校が少し好きになった気がする。

高台にあるこの校舎から眺める景色は私のお気に入りとなった。

入学以来ずっと廊下側の席だったので、こんなにも遠くが見えるとは知らなかった。

それと、もうひとつ、外を眺めていて気付いたことがある。

それは、教師も人間なんだなってこと。
先生達にも日常生活があり、家庭があり、感情ってものがある。


そんなことに気付かされたきっかけはあのバイク。
いつも、停まってる大きなバイクの主は誰なんだろうって思ってた。

アイツだった。
入学式で超目立ってた体育の先生で、近くの女子達がかっこいいかっこいいって騒いでいた人。

授業のない時に、時々バイクの様子を見に来るアイツを見ていると、教師も人間なんだなって思った。

大好きなんだろうな、バイクが。
ものすごく大事なんだろうなって。