…午後10時。やっと接待が終わり、取引先と店先で別れ、駅に向かって歩き出した。

…やっと、朱莉の待つ家に帰れる。

そう思ったら、勝手に頬が緩んだ。

「…もしもし?」

そんな俺の元に、一本の電話。

相手は久美からだった。

『仕事終わった?』
「終わったけど?なんか用?」

『さっき、朱莉と夕飯食べたんだけどさ、ちょっと飲ませすぎちゃって』
「…は?…朱莉、酒弱いのに、飲ませたのか?」

『あ〜うん、ゴメン』
「…ったく。…で?朱莉は?」

『それがね、一人で帰れるからって聞かなくて、一人で駅に向かって行っちゃった』

…それでもお前は親友か⁈と、突っ込みたい衝動にかられながら。

「…どこの駅?」
『⚪︎⚪︎駅』

居場所を知るや否や、俺は駅に向かって走り出した。