…寝ちゃったよ。…ドキドキして眠れないのは、どうも私だけらしい。

そう思うと、なんか悔しい。

…司にとって、私はきっと、女ではないんだとこの時改めて認識した。

「…バカ司」
「・・・ん」

私を抱きしめたまま、熟睡中の司の鼻を、きゅっとつまんでやった。

…私なりの小さな意地悪だった。起きてる時にしようものなら、さっきのように、頬をつねられかねない。

本気でいたいから、それだけは勘弁。

豆球だけが点いた薄暗い部屋の中。掛け時計の針の音と、司の寝息だけが聞こえている。

…ここは、私の部屋じゃない。…当たり前なんだけど、それが凄く寂しく感じて。

・・・でもね?

火事が起きてから向こう、私はそんな事を考える暇もないほどだった。

だって、司がずっと傍にいてくれたから。

悪態着くけど、妙に優しかったり、私が少しでも暗い表情になると、気を逸らすように相手してくれたり、そして今だって、私を独りにしないように、同じベッドで寝てくれて・・・。

司は分かってるのかな。…私がどれだけ救われてるのか。

…そっと、司の胸に耳をあてると、規則正しい心音が聞こえてきた。

不安な気持ちが落ち着いていくのが分かった。

「…司、ありがとね」

スヤスヤと眠る司に、お礼を言うと、私も目を閉じた。