「何で?」




男の人は低い小さな声で言った。




あかねの首筋がジンとする。





「何でって…こんなのっ…変だよっ…。」






「じゃ、どうしてここに来た?」





「…それはっ……。」





「噛まれたかったんだろ?」





「違っ…そんな訳ないっ!」





でも、どうして?




何か満たされない。




だけどあたしは自分の足で




ここへ来た。




噛まれたい訳が…ない……





「噛んで欲しかったんだろ?」





「やめてっ!!

 何であたしがっ…あんたなんかに…

        意味分かんないし… 
 
 だいたい、痛いし…

      気持ち悪いし…

   それに…何か……へ…ん…だょ…。」  







あかねはぐったりとして、




気を失ってしまった。




「…ったく、何やってんだ俺は…。」





意味深な言葉を口にして




男はあかねを抱き上げた。







《ピンポーン・・・》








あかねの母が奥からパタパタと出てきて




玄関のドアを開けた。





「……今晩は。」






そこには見覚えのない




男子生徒があかねを抱え、立っていた。




「放課後に
 
 倒れちゃったみたいで、

     先生とか居なくて…

  確か、学校から近い

      お宅だった気がして

          お連れしました。」











   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  





「……ん…。」





「あかね、大丈夫?」





「…お母…さん?」





「あかね、
 
 貧血で放課後に倒れたそうよ。

       それで暮野君が……」





「くれ……の?」





暮野?…何て聞いたこともない……




誰だろ。





「今、呼んでくるわね。」





そんな人、知り合いには…




居ないはず。




学校の人かな、放課後だし…







《コンコン!》







「……はい。」





あかねは恐る恐る返事をし、




ドアをじっと見た。