柏葉さんの講義を受け初めて、四週間が過ぎた。

 最初に、二ヶ月間という期間は聞いている。週に一回、一時間の講義。計八回、八時間の講義だ。その内の三分の一は雑談タイム。
 もう四回の講義が終わり、残り四回。折り返し地点だ。もう後たった四回で柏葉さんに会えなくなってしまう。

 そう思ったとき、柏葉さんが提案した。

「うーん、思ったより時間が少ないね。もし睦美ちゃんさえ良かったら、残りの一ヶ月は週二回に増やす? 平日に一日、一緒にご飯でも食べながらどうかな」

 願ってもない申し出に、目が輝いた。神様ありがとう! と叫びたかった。
 一緒にご飯でも食べながら……って、まるでデートみたいだ。今までは日曜の昼下がりに、閉まったバーでの講義だったけれど、外食しながらだなんて。照れるけど、嬉しい。

「は、はいっ、是非っ」

 持っていたノートをぎゅっと握り締めて答えると、柏葉さんはくすりと笑った。

「良かった、嫌がられなくて。その気合を大瀬さんに見せてあげたいなあ。自分のために睦月ちゃんが頑張ってるなんて、嬉しいよね。羨ましい」

 はああ、なんて不毛なんだろう。
 好きな人から、恋の手ほどきを受けるしか、接点を持てないなんて。