みんながお茶出しを終えたあと、凛子はひとり給湯室に戻っていた。
蒼汰の母にもらった時計を濡らさないよう外して、冷蔵庫の上に置いたままだったからだ。
それをはめたあとで、服のボタンをひとつ外してみる。
気になっていたからだ。
蒼汰が今朝、やけに胸許を気にしていたことが。
前の痕が少し残ってるだけだと思っていたけれど、違うのだろうか。
家に居るときは、蒼汰に心配かけまいと確認できなかったのだが。
「なにしてるの、凛子ちゃん。
それ、僕へのサービス?」
うわっ、と凛子は慌てて、胸許を見るのに引っ張っていた服を戻した。
「上村さん~っ。
相変わらず、ろくでもないタイミングで現れますね~」
「なに気にしてるの?」
いえ、ちょっと、と凛子は口ごもる。
「悪霊、まだ憑いてるの? 蒼汰くんに」
憑いてるどころか、千尋さんに迫ってましたよ、とは言えない。
蒼汰ごと殺されそうな気がしたからだ。