Prrrrrrrrrrrr……

ベージュのジャケットのポケットでスマホが震え出す。

画面には田舎で暮らす母親の名前が表示されていた。

「二宮、ごめん」

大きく育った木々を見上げている相棒の二宮陽介から少し離れる。

スマホを取り出し、早く出ろと急かすバイブレーションを止める。

「もしもし」

『あ、出た出た。今大丈夫かしら?』

「これから捜索だから、手短にしてもらえると助かるんだけど……」

『大した用事じゃないんだけど、実は押入れの整理をしてたら玖美の日記帳が出て来てね。昔、そっちに住んでた時に遊んでた子の事覚えてるかなって、気になってね』