薄いオレンジの傘をさして、
訪れたこの場所。
あの頃は大きいと感じていた傘が
ちょうど良くなった。

建物に入ると、迷いなくまっすぐに
エレベーターに乗った。



ピーンポーン…




インターフォンのような音を出して止まったエレベーターを降りて、すぐのドアを開けた。



太陽は出ていないはずなのに、やけに眩しくて腕で目を隠した。


少しして、雨特有の匂いと音が強く感じられた気がして、腕を外すと、あるモノが見えた。


薄い水色のビニール傘。


あの、傘は…









「………ミ、ウ………?」




振り向いた時に、
黒く長い髪がサラリとゆれた。


そして、いつものように、



「ユメ。」




ニコッと、笑ったんだ。