そして翌日、6月9日。


あたしはいつも通りに家を出た。


起きた瞬間から緊張していて、胸がキュッと苦しくなる。


これからあたしは公恵を騙し、奴隷になるためのチケットを渡す。


そう考えると妙な汗が背中に流れて行った。


「おはよう、朱里! 昨日は楽しかったね」


教室に入って真っ先に声をかけてきたのは彩美だった。


放課後は真っ直ぐ家に帰っている彩美からすれば昨日の出来事はとても新鮮だったのだろう、その表情は生き生きとしている。


「そうだね」


「正直、正木さんとは話が合わないと思ってたけど、話してみると面白かったし」


彩美は満足そうにそう言った。


昨日の会話をしていると、公恵が登校してきた。


教室に入ってすぐあたしたちと目が合い「おはよう」と、声をかけてくる。


いつもなら挨拶をし合うような仲でもないけれど、昨日で一気に距離は縮まった。


あたしは窓際へと視線をずらして、公恵たちのグループが全員登校してきている事を確認した。