6月に入り、夏の甲子園予選まで、いよいよ二ヶ月を切った、とある平日の朝。


「で、せっかく部員も揃ったんだし、練習試合やりたいでしょ?
なのに、和澤が土日は忙しいからダメっていうわけ。
夏の大会で一回でも勝てたら練習試合してもいいっていうけど、その夏の大会のために練習試合したいって言うのにさー」


朝練後の部室、昨日発売の漫画を読んでいる敦士に話しかけると、敦士はそれから顔をあげた。


ただの練習なら、生徒だけでもやれるけど、試合は監督抜きにはやれないんだ。

で、野球には一切興味ないおじいちゃん先生の和澤はそんなことに時間使いたくないってわけ。


「ま、しょうがなくね?
俺ら人数ギリギリのできたばっかりのチームだし、まず試合してくれるとこ見つかるかもわかんねーよ。

夏大で、俺らの力を見せつけるしかなくね?
練習試合は秋からだ、秋から。下手に練習試合して、あいつらの自信なくすよか、意外とぶっつけ本番のが上手くいくかもしんねーし?」


練習試合が夏までできないことに納得できないあたしとは違って、敦士はもう割りきっているみたい。


ま、できないものをいつまでもグチグチ言ってても仕方ないし。やれることをやるしかないか。