その日の夜


9時


景はコンコンと音を立てて

とある人の部屋の扉を右手でノックした



左手には水差しとガラスのコップを乗せたトレー


扉に掛かっているネームプレートが新しい

《飴屋 満宵》

とかかれたその部屋の扉がゆっくりと開くと、「どうぞ」と可愛らしい声とともに部屋の主、満宵が顔をのぞかせた


「ありがとう、失礼するね」


景は軽く頭を下げながら中に入る


ダンボールが積み重なってはいるものの、だいぶ片付いた新しい彼の部屋に、景は感嘆の声を漏らした


「おー、もうすっかりミヨちゃんの部屋ってかんじだね!」

「あははっ、二年生は夕食の時からみんな僕のことミヨちゃんって呼ぶね〜。可愛いからいいけどっ」


満宵は部屋のドアを閉めながら笑う


そして景の持つ銀色のトレーを見て

「僕のこと、聞いたんだね」

とふわりと笑った