「羽山、おはよう」


「おはようございます。お嬢様」



慌ただしい朝。


ひととおり身支度を終えた私はリビングへ向かう。


うちで一番ベテランな使用人の羽山は今日も姿勢良く出迎えてくれた。



「…あら、今日は髪を巻かれたのですか」


「えへ、よく気がついたわね。さすが羽山。

さっき梅子にやってもらったの。

可愛いでしょ」


「はい。お綺麗です」



羽山がニッコリ微笑むとその後ろからツンツン頭が顔を出す。



「うわ〜、なに色気付いてんの?

姉ちゃん男でもできた?」


「…は?」



この生意気な物言いは、2つ年下のうちの弟、蓮(れん)。


誰に似たんだか、ちゃらんぽらんな奴で、とても我が有栖川家の跡継ぎとは思えない。


昔は可愛かったのに…。



「っ、なんの話?

別に色気付かなくてももとからモテてますので!

それよりアンタさっさと準備してよね」


「へーい」



まったく…